それらの塩を精製水に溶解すると容器壁面に吸着してしまうので,希薄な酸の水溶液に溶かしましょう。
マグネシウムイオンやカルシウムイオンがアルカリ性水溶液中で水酸化物の沈殿を生成することは有名ですが,これはpH 調整をしていない精製水中でもゆっくりと起こります。これらの塩を精製水に溶解した場合,調製直後は溶存しているのですが,時間とともに容器壁面に吸着して濃度が減少していきます。
これを防ぐには,希薄な酸の水溶液に溶解するのが効果的です。例えば10 mmol/L 程度の硝酸水溶液に溶かして調製するとよいでしょう。 (市販されている標準液の中には,イオンクロマトグラフ用として,この程度の酸の濃度に調製されているものもあります。)
ただし,このときの酸の濃度を高くしすぎる (例えば100 mmol/L 以上にする) と,その酸が持つ強い溶出力の影響でピークがブロード化します。例えば,市販のマグネシウムイオン・カルシウムイオンの1000 mg/L 標準溶液の中には0.1~1 mol/L 程度の硝酸または塩酸溶液として市販されているものがあり,これを1/10 程度の希釈率で注入するとピーク形状が明らかに劣化しますので,ご注意ください。
逆に,試料溶液中の酸の濃度が低いと,ある程度注入体積を大きくしてもピーク形状が変化しにくくなります。注入体積を100 μL 以上にしたいときには,酸の濃度を1 mmol/L 程度まで下げるのが適切です。