装置をセットアップした後や保守を行った後の装置の真空漏れをチェックする方法です。
真空漏れが明らかになったときは、「2. MSの真空漏れ」記載の要領で真空漏れの箇所を特定し、対処してください。
真空漏れ状態で装置を運転することは感度低下、ノイズ増加、フィラメント切断など諸問題の原因になります。そのため保守作業を行ったときにはその部分の真空漏れチェックを行ってください。ここでは、この真空漏れチェックの方法を解説しています。
GCMS ではGC での漏れとMS の漏れでは様子が異なってきます。通常運転中において、GC に漏れが存在する場合はキャリアガスが外に漏れ出ます。逆にMS に漏れが存在する場合は、空気が吸い込まれます。
そのためGC における真空漏れのチェックは「1. GC キャリアガス圧力封入」を参照してください。
MSにおける真空漏れのチェックは、まず「3. ピークモニタ画面による真空漏れのチェック」に従って真空漏れの有無を確認ください。もし漏れがあるようでしたら、次に「4. 石油エーテル
※による真空漏れのチェック」をインタフェースのカラム接続部に対し行ってください。お客様の通常のご使用では、漏れる可能性が高いのは前扉かインタフェースのカラム接続部のどちらかですので漏れ個所が特定できます。「2. MS の真空漏れ」に従って処置してください。前扉・インタフェースのカラム接続部以外の漏れがある場合は、当社営業所/代理店または
当社指定のサービス担当店に連絡してください。
この方法はまず、インジェクションのカラム接続部に閉塞栓を装着させ、スプリットとパージ経路をブラインドナットで閉鎖し、キャリアガスをインジェクションおよびキャリアガス、スプリット、パージ経路内に封入します。そして時間が経過するに従い、封入されたキャリアガス圧力の変化を見ることで漏れを発見します。キャリアガス圧力の変動は、GC-2030 のタッチパネルの[HOME]-[試料導入部]の画面をモニタすることで観察します。
1) 装置を停止します。装置の電源をOFF にします。GC-2030 の電源はONのままにします。
2) GC のオーブンドアを開け、インジェクション側のカラムを取り外します。
3) カラムの代わりに閉塞栓をインジェクションに装着します。
4) 次にスプリット経路とパージ経路のそれぞれのVENT にG 型ジョイントのブラインドナットを装着します。
5) キャリアガスの供給圧力(ボンベからの圧力)が350 kPa 以上であることを確認します。
6)[HOME]-[試料導入部]の画面から各項目を以下のように設定してください。
・注入モード: Split
・制御モード: 圧力
・入口圧: 350 kPa
・全流量: 100 mL/min
7) フローコントローラの制御を[On]にし、AFC の制御をOn にします。
8) 5 分待って、入力圧が300 ~ 400 kPa であることを確認してください。もし、400 kPa 以上であればカラムナットを少しゆるめて圧を逃がしてください。もし、300 kPa 以下でであれば、供給圧力をもう少し高くしてください。
9) 全流量が2 ml/min 以下であることを確認します。もし、全流量が2 ml/min 以上であればどこかに漏れが存在します。
10) フローコントローラの制御を[Off]にします。
11) 表示圧力の変動に注意してください。
12) 圧力が10 分あたり5 kPa 以上降下しないことを確認してください。5 kPa 以上圧力が減少した場合はどこかに漏れがあります。
13) キャリアガス圧力封入を行っている間に、He リークディテクタを用いてG 型ジョイントおよびインジェクションのナットなどの接続部、および溶接部のキャリアガスのリークをチェックすることもできます。
14) 漏れている場所を発見しましたら、その場所を増し締めするか一度取り外して異状がないか確認してください。(G 型ジョイントを取り外した場合はアルミパッキン3 枚を必ず新しいものに交換してください。)
15) 手順8) ~ 12) の操作により、圧力が減少し、漏れがある場合はまずインジェクションのセプタムを新しいものに交換し、同時にインジェクション内のガラスインサートにO リングが装着されていることを確認して再び手順8) ~ 12) の操作を行います。
16) 手順15) の操作でも漏れている場合は、スプリット経路の配管に漏れがあると思われますので、スプリットラインのG 型ジョイントを増し締めするか、取り外して異状がないか確認します。(G 型ジョイントを取り外した場合は、アルミパッキン3 枚を必ず新しいものに交換してください。)
17) 手順8) ~ 12) の操作を再び行います。それでも漏れていた場合は、当社営業所/代理店または
当社指定のサービス担当店に連絡してください。
注記: GC キャリアガス圧力封入を行うときの注意事項
a) G 型ジョイントを取り外し、再び接続した後、その場所が漏れないように注意してください。
b) G 型ジョイントを取外した場合、アルミパッキン3 枚を必ず新しいものに交換してください。
c) スプリットラインのG 型ジョイント以外は取り扱わないでください。これらの場所については弊社サービス担当者にご連絡ください。
d) GC のインジェクション、AFC 配管などには石けん水(スタープなど)は使用しないでください。
MS の真空漏れは、ロータリーポンプが正常に動作できないような大きな漏れから、ターボ分子ポンプがほぼ正常に動作できる小さな漏れまで様々です。この真空漏れは些細なことから生じます。
分析管の扉には必ずO リングと呼ばれるゴムが入っています。このO リングが接続部分で双方の面に密着することにより、真空漏れを防ぎ分析管を真空状態に保ちます。
そのため、装置を停止させ、分析管を開けて作業を行った場合、漏れを防ぐため以下のことに注意してください。
注記: 真空漏れを防ぐための注意事項
• Oリングをつけ忘れないこと。
• Oリングを正しくつけること。
• Oリングに付着したゴミを取り除くこと。
• Oリングが密着する面(シール面)上のゴミを取り除くこと。
• シール面に傷をつけないこと。
• カラムとインタフェースの接続部分のベスペルフェルールをつけ忘れないこと。
• カラムとインタフェースの接続部分のナットをしっかり装着すること。
• GCのセプタムを定期的に交換すること(注入回数80~100回が目安です)。
ロータリーポンプやターボ分子ポンプが正常に動作できない場合
1) ロータリーポンプの排気音が数分経過した後も静かにならない。
2) ターボ分子ポンプが起動したが、約5 分経過して自動的に排気系の電源がOFF になった。
前述の2 つの場合には必ず真空漏れを引き起こしています。そのため分析管がリークされるのを待って前述の真空漏れを防ぐための注意事項を前扉およびカラムとインタフェースの接続部について確認してください。(尚、前扉とカラムインタフェースの接続部分以外の場所で真空漏れを引き起こしている場合、当社営業所/代理店または
当社指定のサービス担当店に連絡してください。)
ここでは装置が正常に起動(PC からの操作により装置起動後、ターボ分子ポンプの動作状態が、[起動・停止]画面で[手動操作>>]ボタンをクリックすると開く[ターボポンプ]インジケータが、緑色で点灯している状態)した後の真空漏れチェックの方法を説明します。この方法はチューニングのピークモニタで水(m/z18)と窒素(m/z28)のピークをモニタします。そしてこの2 つのピークの高さを比較することにより真空漏れのチェックを行います。
1) GCMS 分析のアシスタントバーで[チューニング]アイコンをクリックします。
[チューニング]ウィンドウが開きます。
2) アシスタントバーの[ピークモニタ]アイコンをクリックします。画面がピークモニタ画面に変わります。
3) ピークモニタ画面で[測定モード]を[Q3 スキャン]にして、モニタするイオンのm/z を18(水)と28(窒素)に設定します。
または、[モニタグループ]から[水、空気]を選択します。
4)[検出器]をm/z18 とm/z28 のピーク形状がはっきりとわかるように0.60 ~ 1.50 kV ぐらいに設定します。
5) フィラメントを点灯します。
6) m/z18 とm/z28 のピーク高さを比較します。m/z28 の高さがm/z18 の高さの2 倍より高い場合、真空漏れを起している可能性が高いです。
注記: 真空立ち上げ直後はm/z18 よりm/z19 のピークの方が大きくなるときがあります。
注記: CID ガス(アルゴン)が入っている場合は、m/z20 に2 価のアルゴンイオン(Ar2+)のピークが出現します。
7) 真空漏れを起していた場合は、装置を停止します。装置本体の電源をOFF にします。
8) MS の前扉とカラムとインタフェースの接続部について、「2. MS の真空漏れ」の真空漏れを防ぐための注意事項を行ってください。
注記: 本装置に前処理装置を接続したり、新しいバルブを追加した場合、GC/MS 装置本体に真空漏れがなくても真空漏れチェックの基準を満たさないことがあります。
また、流路のパージが不十分なときも、基準を満たさないことがあります。配管をパージしてください。
この方法は、MS が真空漏れを起こしている場合、空気を吸い込むことを利用します。石油エーテル※をカラムとインタフェースの接続部にかけてやり同時にピークモニタ画面において石油エーテル※のm/z 43 をモニタします。そしてm/z 43 のピークの変動により真空漏れのチェックを行います。
注記: 石油エーテル※による真空漏れのチェックを行うときの注意事項
• 石油エーテル(あるいはヘキサン)以外のものは、絶対に使用しないでください。
• 石油エーテルが電気基板にかからないよう注意してください。
• カラムとインタフェースの接続部以外の場所に石油エーテルをかけないでください。
1)[GCMS 分析]プログラムのアシスタントバーで[チューニング]アイコンをクリックします。
[チューニング]ウィンドウが開きます。
2) アシスタントバーの[ピークモニタ]アイコンをクリックします。
3) ピークモニタ画面でモニタするイオンのm/z を43(石油エーテルのフラグメントイオン)に設定します。[倍率]は50 ~ 100 に設定します。
4) [測定モード]は[Q3 スキャン]を選択します。
5) [検出器]は0.60 ~ 1.00 kV に設定します。
6) フィラメントを点灯します。
7) 注射器を用意して石油エーテルを充てんします。
8) 前扉とカラムとインタフェースの接続部へ石油エーテルをかけます。
9) しばらくピークモニタ画面のm/z 43 のピークに注目します。m/z 43 のピークが大きく変動(大きくなる)した場合、その場所が真空漏れを起こしています。
10) 手順7) と8) の操作を数回繰り返します。そしてm/z 43 のピークに全く変動がない場合、真空漏れは起きていません。
11) 真空漏れを起こしていた場合、その場所について「2. MS の真空漏れ」の真空漏れを防ぐための注意事項を行ってください。
※石油エーテルは、ヘキサンでも代用可能です。この際の手順やモニタするm/zは石油エーテルと同じです。