システムピークの位置は溶離液に含まれる酸 (例えばp-ヒドロキシ安息香酸) の保持時間にあたるため,注入した試料中にそれが含まれていなければ,その位置に負ピークが出現するものと考えられています。
下図には,典型的なノンサプレッサ用陰イオン交換カラムでの標準溶液のクロマトグラムを示します。15 分付近に見られる負のピークが,ここで「システムピーク」と呼んでいるものです。second dip peak と呼ばれることもあります。
この他に,「ウォーターディップ」と呼ばれる負のピークが注入直後 (下図では2 分付近) に見られます。これは試料の溶媒に由来するもので,ノンサプレッサ方式だけでなく,サプレッサ方式においても大抵観察されるものです。first dip peak と呼ばれることもあります。
システムピークの出現機構については,定量的には研究中ですが,定性的には以下のように説明されています。溶離液に疎水性の高い酸 (p-ヒドロキシ安息香酸など) を用いたとき,この酸がカラムに逆相分配的に保持され,一定の時間を経てカラムから溶出します。一方,注入した試料中にはこの酸が含まれていないため,一時的にその濃度の低いゾーンがカラム内に形成されます。このゾーンが溶離液中の酸と同じ速度で移動し,特定の時間に負のピークを与えるというわけです。
疎水性の低い酸を溶離液に用いれば,システムピークは保持しないので,その溶出位置はfirst dip peak と重なり,見かけ上出現しないということになります。例えば,ノンサプレッサ方式の陰イオン分析で用いられるほう酸系の溶離液では,システムピークは出現しません。
なお,システムピークは常に負ピークになるとは限りません。例えばアルカリ性の試料を注入すると,p-ヒドロキシ安息香酸の解離 (イオン化) が促進され,p-ヒドロキシ安息香酸イオンの濃度が高いゾーンが形成されるため,正のピークが出現することがあります。
なぜ,システムピークが出現するような溶離液を用いるかということですが,このような溶離液を用いた方が低濃度で溶出できるため,電気伝導度の感度が改善されるからです。