正確には極限当量イオン電気伝導度のことで,希薄溶液中のイオンが1 モルあたりどのくらい電気を流すかを示すパラメータです。値が大きいほど電気を通しやすいといえます。
当量電気伝導度は通常λという記号で表されます。単位は「S·cm2·mol-1」です (“S” は “ジーメンス” と読む)。化学便覧などに主なイオンの当量電気伝導度が載っておりますので,参照してください。
電気伝導度は温度によって大きく変化します。よって,データには必ず測定温度が付記されます。ノンサプレッサ方式では目的イオンと溶出イオン (溶離液中のイオン交換相手となるイオン) の当量電気伝導度との差がピークの大きさに直接関係するので,溶離液組成の選択においてはこの値が非常に重要です。たとえばフタル酸水素イオンでは30 程度の値を示します。
当量電気伝導度を決めるのは,イオンの動きやすさです。そして,動き易さを決める要因は水和イオン半径とイオンの価数です。一定の電圧に対してイオンがどの程度迅速に動くかの指標が当量電気伝導度ですから,価数が同じで同じ力が働くのであれば,小さいイオンほど動き易く,価数が大きく働く力が大きいほどやはり動き易いということになります。
1 価のイオンの当量電気伝導度は約80 が上限といわれていますが,H+ とOH− のみは,他のイオンに比べて非常に高い当量電気伝導度を示します。これは,プロトンジャンプといわれる機構を持つためで,水素結合でつながれた水分子間を電荷のみが動いてゆき,他のイオンのようにイオンそのものが移動するのではないということです。この結果非常に速い速度で電荷が移動するので当量電気伝導度が高くなるわけです。