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  • 公開日時 : 2020/10/22 15:12
  • 更新日時 : 2024/02/21 14:52
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【イオンクロマトグラフ】カラムはどのように洗浄したらよいですか?

【イオンクロマトグラフ】カラムはどのように洗浄したらよいですか?
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回答

多価電解質に対しては高濃度の緩衝液を,疎水的な有機物に対しては水と極性有機溶媒との混合液を,金属に対してはEDTAの水溶液を通液するのが一般的です。
 
イオンクロマト用の分離カラムは比較的高価なので,洗浄を行うことにより再生し,利用することが多いと思います。しかしながら,洗浄液自体は視点を変えれば溶出力の非常に強い溶離液ということになりますので,少なからずカラムにダメージを与える危険性を併せ持っています。
洗浄を繰り返せば半永久的にカラムを使用できるというわけではないので,その点を理解した上で,必要があると感じた場合には洗浄をしてみてください。
 
カラムに蓄積される汚れには様々な種類があるため,洗浄方法も一通りではありません。分析している試料の組成を考慮し,適切な洗浄液を,なるべく低流量で通液してください。なお,このとき通液方向を分析時の逆に接続すると効果的な場合が多いようです。
また,ガードカラムを使用している場合,メインカラムは正常でガードカラムのみ汚れていることがあります。ガードカラムを流路から外した状態で標準試料などの分析を行うことにより問題が解決するようなら,洗浄はガードカラムに対してのみ行うのが適切でしょう。
 
【注意】
以下の内容を実施する前に,必ずカラムに同梱されている取扱説明書をお読みください。記述内容に矛盾がある場合は,取扱説明書の内容が優先されるものとお考えください。
 
多価電解質 :

一般に電荷の大きい物質ほどイオン交換基に強く吸着します。通常の溶離液組成ではカラムから溶出しない物質もあり,それらが蓄積することによって交換容量の低下,すなわち保持時間の減少をもたらします。
イオン交換モードにおいては,溶離液の塩濃度を増やすほど全体の保持時間が短くなるという性質があります。したがって,多価電解質のようにイオン交換的に保持されている物質を洗浄するには,通常の溶離液よりも塩濃度を高くした溶液を通液するのが効果的です。
 
 
疎水的な有機物 :

イオン交換モードだからと言って,カラム内で働いている相互作用はイオン交換だけとは限りません。基材となっている樹脂が若干の疎水性を持ちますから,水にやや溶けにくい有機物はその樹脂に対して疎水的 (逆相クロマトグラフィー的) に保持することがあります。
こうした物質を洗浄したい場合は,水と極性有機溶媒との混合液を通液するのが効果的です。添加する溶媒には,アセトニトリルやメタノールがよく用いられます。ただし,イオン交換樹脂はそれぞれ有機溶媒への耐久性が異なりますから,カラムの取扱説明書をよく読み,溶離液に加えてもよい有機溶媒の種類と濃度を確認してください。また,溶媒の種類によっては溶液の粘性が上がり,カラムに対して思わぬ負荷圧をかけてしまう場合もあるため,流量はなるべく低めに設定しましょう。
 
 
遷移金属 :

特に溶離液がアルカリ性の場合,試料中の金属イオンが水酸化物となって沈殿し,カラムに蓄積されることがあります。遷移金属類は一部のイオン,例えばりん酸イオンを吸着し,そのピークが小さくなったりまったく出なくなったりすることがあります。また,目詰まりの原因となるケースも見受けられます。
こうした遷移金属類を洗浄したい場合には,金属と錯体を形成し可溶化させる性質を持ったキレート剤を通液するのが効果的です。もっともよく用いられるのは,エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)の2 ナトリウム塩 (EDTA・2Na) の水溶液を通液する方法です。0.1%程度の水溶液を調製して,通常の送液とは逆方向に低流量で数時間程度送液してみましょう。
なお,EDTA を精製水に溶かすのではなく,溶離液に溶かしたものを洗浄液とするのでも構いません。ただし,EDTA は酸性の水溶液中では溶解度が下がり,析出することがあります。酸性の溶離液や洗浄液を使用している場合には,EDTA が混入しないようにしてください。
【注意】
EDTA・2Na で洗浄する場合,陰イオン分析用サプレッサカートリッジは接続しないでください。このカートリッジにEDTA が流入すると,カートリッジ内部で析出して急激な圧力上昇が発生し,再生不能となることがあります。
【注意】
分離カラムをEDTA・2Naで洗浄した後には,溶離液を分析時の流量で2 時間以上通液し,EDTAを完全に洗い流してください。特にサプレッサ方式の場合は,この操作を実施した後でサプレッサを取り付けてください。

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