溶離液の組成が変化したか,カラムが劣化したことが原因です。
まずは溶離液を再調製してみましょう。使用時よりも濃い保存用溶液を使っている場合は,それも疑ってみてください。また,バックグラウンド電気伝導度が正常な値を示しているかどうかを確認することも必要です。
溶離液を調製しなおしても状況が回復せず,溶離液流量やカラム温度にも異常が認められないとしたら,後はカラムが原因としか考えられません。適切な方法でカラムを洗浄し,それでも回復しないようならカラムを交換してください。
サプレッサ方式の陰イオン分析の場合 :
サプレッサ方式の陰イオン分析用溶離液として用いられる炭酸ナトリウム緩衝液は,時間経過とともに空気中の炭酸ガスとの平衡の関係でpH が変化し,保持時間が徐々に短くなる現象が認められます。炭酸ガストラップの装着により多少は変化を防ぐことができると考えられますが,いずれにせよこの溶液は用時調製するものとお考えください。
なお,使用時の10~100 倍濃度の原液を調製し,これを使用時に希釈する方法もあります。濃度が高ければ相対的に空気からの溶け込みの影響が小さくなるため,この原液は1~2 週間程度は保存できます。密閉して冷蔵庫などに保管しましょう。
一価陽イオンのみを分析する条件の場合 :
古くから使われているスルホン基結合型陽イオン交換カラム (例 : Shim-pack IC-C1) では,一価と二価の陽イオンを別々の分離条件で分析していました。一価の陽イオンを分析する条件においては,二価以上の陽イオンはカラムの入口にトラップされてイオン交換基をふさいでしまうため,分析を行うにつれて徐々に保持時間が短くなります。
溶離液とともに流れ込む多価陽イオンについては,専用のプレカラム (例 : Shim-pack IC-PC1) で除去することができます。しかし,実試料中に含まれるこうしたイオンを防ぐことはできないため,保持力を回復させるためには一定の周期でカラムを洗浄する必要があります。