固体,溶離液中で析出するもの,カラムに強く吸着するもの,カラムや装置を傷めるものは絶対に注入しないでください。前処理の第一の目的は,試料からそうした要素を取り除く点にあります。
前処理の目的のひとつは正しい定量値を得ることであり,希釈や濃縮は主にそのために行います。しかし,多くの分析者は,前処理の第一目的を「カラムや装置の保護」に置いているはずです。分析のランニングコストを下げるためには,どうしても試料の前処理が欠かせません。
そこで,ここでは「イオンクロマトに注入してはいけないもの」を列挙します。
• 固体 (粉末) : カラムやインジェクタを目詰まりさせる恐れがある。
• 溶離液中で析出するもの : 金属イオン (アルカリ性の溶離液で水酸化物として沈殿する),タンパク (pH や塩濃度の変化により変性・沈殿する) など。カラムの目詰まりや分離能力低下をもたらす。
• カラムに強く吸着するもの : 多価電解質,疎水性物質など。主にカラムの分離能力低下をもたらす。
• カラムや装置を傷めるもの : 強い酸や塩基,一部の有機溶媒など。カラムにより使用できるpH 範囲や有機溶媒濃度・種類に幅がある。
• 高濃度の塩を含むもの : 目的成分の分離検出を妨害する。また,インジェクタ内での塩の析出の恐れがある。