溶離液にアンモニウムイオンと包接作用を持つ18-クラウン-6 という成分を添加することで,その溶出位置を制御することができます。
イオンクロマトグラフィーでは,各イオンの分離にイオン交換作用を利用しており,1 価イオンであるLi+,Na+,NH4+,K+の溶出位置が近くなります。そのため,Na+濃度が高いと,その直後に溶出するNH4+の定量に影響することが懸念されます。これを解決するひとつの手段として,溶離液に「18-クラウン-6」という化合物を添加する方法があります。
クラウン化合物はC,H,O から成る中空リング状の物質で,内面に集まった酸素により,特定の陽イオンを包接する効果があるとされています。クラウン化合物の中でも18-クラウン-6 はNH4+やK+に対して包接作用を持つことが知られており,これを溶離液に添加することで,これら2 成分の固定相への保持を選択的に強めることができます。その結果,Na+とNH4+との分離が改善します。
溶離液への18-クラウン-6 の添加により,K+の保持時間はNH4+以上に激しく変化するため,他のピークと分離できるよう保持力をコントロールする必要が生じます。こうした溶出位置の制御は,溶離液へのクラウン化合物の添加量や温度により行ないます。