分離条件を変更するか,ポストカラム誘導体化-蛍光検出するなど別の分析方法があります。
現在市販されている陽イオン分析用のカラムは一価と二価の陽イオンを一斉分析することができますが,ナトリウムイオンとアンモニウムイオンの保持時間が近く,分離に苦労することがあります。両者の濃度比が大きい場合は何か方法を考えることが必要です。
両者の保持時間を引き離す方法のひとつとして,溶離液へのクラウンエーテルの添加が挙げられます。これは,クラウンエーテルのアンモニウムイオンへの包摂作用を利用したもので,アンモニウムイオンやカリウムイオンの溶出を特異的に遅らせることができます。ただし,溶出の遅れたカリウムイオンがマグネシウムやカルシウムイオンのピークと重なってしまう可能性がありますので,添加する量には注意が必要です。
次に,スルホン基結合型のポリスチレン系樹脂を充てんしたカラム (例 : Shim-pack IC-C1) を使うという方法があります。このカラムはナトリウムイオンとアンモニウムイオンとの保持時間が多少離れています。二価の陽イオンを分析対象としない (試料中に含まない) 場合は,それらを使うのも有効な解決策といえるでしょう。
この他,分離カラムから溶出したアンモニウムイオンを蛍光誘導体化試薬 (例えばo-フタルアルデヒド) と反応させ,蛍光検出するという方法もあります。また,無理にクロマトグラフィーにこだわらず,インドフェノールブルー法などの吸光光度法を用いるのも現実的な選択と思われます。