同じ荷電を持つイオン交換基との静電的反発により,非保持の位置に溶出します。
クロマトグラム上に最初に現れるピークは「ウォーターディップ」と呼ばれ,巨大な負ピークとして観察されることが多いようです (陰イオン分析の場合)。イオンクロマトにおける試料は希薄な水溶液であることが多く,緩衝液である溶離液よりもバックグラウンド電気伝導度が小さいために,その電気伝導度の小さいゾーンがカラムを素通りして出てくるものと (ごく大雑把には) 説明されています。
しかし,試料によっては単純な負ピークにはならず,この位置で検出応答が激しく上下することもあります。これには様々な要因があり,定量的な解析は一般に大変困難です。その要因のひとつとして,陰イオン分析においては陽イオンが,陽イオン分析においては陰イオンがこの位置に溶出していることが挙げられます。
陰イオン分析を例にとれば,イオン交換基が正の荷電を持ちますから,陽イオンはこれと反発して樹脂に近づけないことになります。これをDonnan 排除といいます。このことにより,陰イオン分析において陽イオンは非保持の位置に溶出します。