試料中の金属イオンが固定相表面に吸着,沈殿したことが原因と推察されます。
この現象は試料としてめっき液や土壌水,排水など,金属イオンを多く含む水溶液を分析している場合に発生するケースが多いようです。サプレッサ方式,ノンサプレッサ方式ともに類似の報告例があります。
原因として考えられるのは,試料中の金属イオンが固定相表面に吸着,沈殿したということです。金属イオンはアルカリ性水溶液中で水酸化物として沈殿することが知られていますから,溶離液がアルカリ性の場合は特にこのような現象が発生する確率が高いといえます。一方,りん酸イオンは金属と配位結合する性質を持つため,結果としてピークが小さくなったりテーリングしたり,極端なケースではまったくピークが出なくなることもあります。
このような現象が起こったときは,まずガードカラムを外してピークが出るようになるかどうかを確認してください。ピークが出るようならガードカラムの問題と考えられます。出ないようなら,メインカラム側にも問題があるものと考えられます。疑いのある方について,以下の洗浄を試みてください。
分離カラムの洗浄は,EDTA·2Na (エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩) 水溶液を通液するのが効果的です。0.1%程度の濃度の水溶液を調製し,流速を小さくして (0.5 mL/min 以下) 分析時の逆方向に数時間程度送液してみましょう。
洗浄して効果がなければ,残念ながらカラムを新品のものに交換するしかないでしょう。
【注意】
EDTA・2Na で洗浄する場合,陰イオン分析用サプレッサカートリッジは接続しないでください。このカートリッジにEDTA が流入すると,カートリッジ内部で析出して急激な圧力上昇が発生し,再生不能となることがあります。
【注意】
分離カラムをEDTA・2Naで洗浄した後には,溶離液を分析時の流量で2 時間以上通液し,EDTAを完全に洗い流してください。特にサプレッサ方式の場合は,この操作を実施した後でサプレッサを取り付けてください。