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  • 公開日時 : 2020/10/22 11:21
  • 更新日時 : 2024/02/21 15:24
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【イオンクロマトグラフ】硫酸イオンやカルシウムイオンの濃度が高い試料のピーク分離

【イオンクロマトグラフ】硫酸イオンやカルシウムイオンの濃度が高い試料を分析したら,それらの保持時間が早くなってしまい,直前のピークと分離しなくなりました。
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回答

これらのピークは一般にテーリングし,テーリングするピークは濃度が高くなるほどピークトップの時間が早くなる性質があります。希釈して濃度を下げるか注入量を減らしてください。
 
解説:
「テーリング形状のピークは,面積値が大きくなるにつれてピークトップ位置が前にずれる」点については,すべてのクロマトグラフィー (GC などを含む) に共通する現象です。
そもそもピークが左右対称となるのは,平衡時における目的成分の固定相中濃度と溶離液中濃度との比が総濃度によらず一定であるという前提の上に成立しています。仮に,目的成分の総濃度が高くなるにつれて固定相よりも溶離液中の濃度が相対的に増える (例えば固定相に吸着しきれない場合など) とすれば,濃度の高いゾーン (ピークトップ付近) は溶離液側に多く分布するためにその流れに乗って早く移動します。逆に,濃度の低いゾーン (裾野付近) は固定相側に多く分布するために,ゆっくり移動することになります。その結果がテーリングです。
目的成分の総濃度が高くなればなるほど,テーリングはきつくなっていきます。高濃度の試料を注入するほど保持時間 (ピークトップの時間) は短くなるわけです。
 
ここから先は,イオンクロマトに限定した話になります。

イオンクロマトでは,比較的保持の強い成分ほどテーリングが発生しやすいことが知られています。おそらくそうしたイオンは,単純なイオン交換だけでなく複合的な力で固定相に吸着しているため,高濃度になるとその力の中のどれかが飽和するか働きにくくなって,テーリングを引き起こすものと推察されます。
こうした性質は,ある程度まではやむを得ないものと考えざるを得ません。試料を希釈して濃度を下げるか,注入量を減らすかのどちらかを選択するしかないものと思われます。硫酸イオンやカルシウムイオンなどのテーリングしやすい成分については,できるだけ100 mg/L 以下の濃度範囲で定量を行うようにしてください (50 μL 注入時)。
ちなみに,比較的早く溶出するナトリウムイオンや塩化物イオンは,分離条件によってはリーディング形状になることがあります。高濃度のナトリウムイオンを含む試料を分析すると,保持時間が遅くなってアンモニウムイオンと誤同定されることがありますので注意してください。

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