できれば疎水性の成分を除去するため固相抽出などでクリーンアップしてください。
低級脂肪酸やアミノ酸,糖類など,低分子量で水溶性の高い有機物は分離カラムから溶出しますから心配ありません。しかし,界面活性剤やフミン酸,タンパクなどの一部は充てん剤表面に吸着し,分離性能の低下や圧力上昇をもたらします。
以下に述べるような方法により,カラムに吸着しやすい有機物を前処理段階でなるべく取り除くことをお勧めします。しかし,どのような方法をもってしても完全な除去を達成するのは困難です。イオンクロマト用の分離カラムは一般に高価なため,必ずガードカラムを装着した状態で分析を行ってください。
前処理による除去 :
有機物を除去する前処理方法には溶媒抽出,固相抽出などがあります。固相抽出法は,前項で述べたとおり,市販のカートリッジに試料溶液を通すだけで済む簡便な方法です。イオンクロマト用として疎水性の充てん剤 (例えばC18 基を結合したシリカゲルや,ポリスチレンなどの疎水性樹脂)を充てんした固相抽出カートリッジが市販されておりますので,カラムの劣化が気になる場合はそうしたものを利用します。
なお,固相抽出法の実用面での問題として,ややコスト高になることが挙げられます。カートリッジの値段は1 本あたり数百円であり,サンプル1 点につき1 本ずつ消費していきます。固相抽出しなかったときの分離カラムの劣化・消耗によるコストを考え,メリットがあると考えられる場合には固相抽出法を導入しましょう。
逆相系ガードカラムの装着 :
別の方法として,疎水性の充てん剤を充てんしたサイズの小さいHPLC用分離カラム (長さ10 mm程度のミニカラム) を,イオンクロマト用分離カラムの直前に取り付けて分析する方法もあります。いわば,疎水性固相抽出カートリッジが常に分離カラムの前にある状態で分析するわけです。
この方法のよいところは,固相抽出法にありがちなロスやコンタミネーションの問題が発生しにくく,定量値の信頼性や再現性が高いことです。逆に欠点は,使っているうちに疎水性化合物がどんどん吸着していくわけですから,どの時点で洗浄あるいは交換したらよいかという目安がなく,気がついたらメインカラムにまで被害が及んでしまう危険性があることです。分析後は逆相系ガードカラムをこまめに取り外し,有機溶媒を通液することにより洗浄する必要があります。